Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




そんな風に反省してみても、そもそも遼太郎が『先生』と呼んでいるのだから、先生から抜け出せないのもしょうがないのかもしれない。遼太郎が『先生』と呼び続ける限り、みのりは本物の〝彼女〟にはなれないのかもしれない。


みのりの思考が独り歩きして迷路に入り込んでしまいそうになった時、思い出したことがある。


『先生は先生なのに、生徒だった俺を『好き』って言ってくれたことを、忘れたくないから…』


遼太郎がまだ高校を卒業したばかりの頃、確かそう言っていた。

遼太郎の『先生』には特別な意味がある。『先生』と呼ぶ言葉の響きの向こうには、想いを自覚した瞬間の心が震える大事な感覚が込められている。


さっきのあの優しい笑顔は、そんな遼太郎の特別な想いがあるからこそ現れるものだ。

今の心の底からラグビーを楽しむ遼太郎の笑顔をみのりは知らなかったけれど、さっきの笑顔はみのりにだけ向けてくれるものだった。


みのりの胸がまた甘く疼き始める。
そして、まるであこがれの先輩を見つめる女子中学生のように、ドキドキと甘酸っぱいような感覚を抱えて、溌溂と動く遼太郎を目で追った。



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