Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
・OB会 ②
そして、いよいよ試合が始まった。
ちゃんと資格のあるレフリーがさばく、本格的な試合だ。
遼太郎たちOBや現役の部活生たち、それぞれがこの試合を楽しみにしているのが窺える。
とは言え、ここからは真剣勝負だ。お互いに勝利のためには一歩も引けない。ラグビーはとにかく、『前へ、前へ』なのだ。
遼太郎がかつて、ラグビーのルールを教えてくれた時に言っていた。
ラグビーは、分かりやすく言えば陣取り合戦。だから、とにかくボールを前に進めて、陣地を広げなければならない。そして、ボールを前に進めるためには、持って走るか、キックをするしかない。
試合の序盤は、お互いのフルバックによる様子見のキックの応酬。
牽制をしあって、これからどのように攻撃を始めるのか見定めている。
高校生側のフルバックがキックをしたのと同時に、痺れを切らした俊次が走り出した。
あっけに取られる両チームのメンバー達の間を、フォワードとは思えない速さで走り抜け、ボールキャッチをしたOBチームのフルバックにタックルをかます。
ピピッ!
その瞬間、笛が吹かれた。
「オフサイド!」
「ええっ!?」
タックルから起き上がった俊次は、怪訝そうな顔をしてレフリーに振り返った。大人のレフリーに対しても物怖じすることはなく、堂々としたものだ。
「君、キッカーよりも前にいたでしょ?その場合は、一旦キッカーよりも後ろに下がってから、もしくはキッカーかキッカーより後ろにいた選手に追い越されないと、ボールには絡めないよ」
「ああっ!!そうだった…!」
あまりにも初歩的なミスに敵も味方も、もちろん遼太郎も呆れていたが、選手同士、それを詰ったり笑ったりする者はいなかった。
しかし、顧問の江口だけは例外だった。
「あんの、バカタレが……!!」
俊次の素質を見込んで、1年生の時から俊次を試合に出し続けているけれども、熱中するあまりルールを無視しがちな俊次のプレーには、江口はいつも苦慮していた。