Rhapsody in Love 〜二人の休日〜




「俊次くんは、試合になると勝ちたい気持ちが(まさ)ってしまうんですよね」


みのりは隣のパイプ椅子に座る江口に話しかけた。

江口は深いため息を吐く。


「普段からうるさく言ってるから、分かってるはずなんだけど、やる気になればなるほどやらかしてくれる」


「それほど、今日の試合はやる気に満ち溢れてるんですね」


みのりは俊次の失敗をそうやって肯定的に受け取ったが、江口は苦い顔をした。


「でも、本当に勝ちたかったら、もっと冷静にならなきゃいかん。現に今も、せっかくキックでエリアを広げてたのに、ペナルティのせいで逆に自陣に食い込まれて、しかも相手ボールの不利な状況になってしまっただろ?」


「……確かに、その通りですね」


みのりは頷いた。

ラグビーの激しさは〝血気盛ん〟と表現するだけの単純なものではなく、そこに冷静な判断力も存在しているからこそ意味のあるものなのだろう。

きっとラグビーをする遼太郎にみのりが惹かれたのも、遼太郎が激しさと冷静さを併せ持ったところがあったからに他ならないと思った。


とにかく、この俊次のペナルティでキックの応酬からは状況が変化する。OB側のペナルティキックからラインアウトとなり、選手たちはぞろぞろと移動をする。






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【ルール解説】
オフサイドのような重いペナルティの場合の試合の再開の仕方は、①相手チームのショット(ゴールを狙う)、②相手ボールのスクラム、③ペナルティキックでタッチラインより外に出し、相手が入れるラインアウト(ボールを投げ入れ奪い合う)、この①〜③のどれかを選択します。
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