Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「くっそーっ!!絶対取り返すぞ!!」
トライを取ったのが、実の兄だったことがなおさら、俊次の敵愾心を煽ってしまった。
トライ後のコンバージョンも決まり、戦況はどんどん目まぐるしく変化していく。
みのりも久しぶりに、そして滅多に見られない遼太郎がラグビーをする一挙手一投足を、目に焼き付けるように見つめ続けた。
絶えずコミュニケーションを取るために、選手達は声をかけ合う。
「ノミネート!」
「右、右!」
「ずれろ!」
「余った!」
飛び交う様々なコールの中から、遼太郎の声を探し出し、その度にみのりの胸がキュンと震える。
そして、パスを受けてボールを持った遼太郎が、高校生達からタックルをされる時には、みのりの体にも思わず力が入った。
「俊次!!ノミネートした相手に集中して、ちゃんと当たれ!!」
花園予選で引退した3年生が俊次に喝を入れ、その大きな声が、みのりの耳まで届けられる。
「江口先生。『ノミネート』って何ですか?」
その言葉は先程の遼太郎も言っていたから、みのりの意識に引っかかった。
「ノミネートっていうのは、プレーが止まってる時に、ディフェンス側が相手チームの特定の誰かを決めて見張ることだ。俊次はまたやる気が空回りして、自分の〝見た〟相手がボールを持つまで待てずに、自分の担当じゃない相手にタックルに行ってしまってるんだ」