Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「とんでもない!違います。私は芳野高校の教員なんです。今は狩野俊次くんの担任してて、3年前は二俣くんも教えてたんです」
ここでの会話は遼太郎の耳に届いているはずはないと思ったが、みのりは慌てて否定した。
するとOBの一人は、みのりが親しげに応えてくれたことに気を良くした。
何よりも、みのりが焦る表情からのニコリと笑みを含む可憐さを見て、すっかりハートを掴まれてしまっていた。
「へぇ、そうなんですか〜。『みのりちゃん』なんて言うから、てっきり」
と、あわよくばみのりと親しくなりたいと、ニッコリと攻略用の笑顔を見せる。
その笑顔を見て、内心ギクリとして密かに身構えた。みのりの経験上、こんな笑顔をする男は大概その後に口説いてくるのだ。
「そんな、私は二俣くんよりずいぶん年上ですし、何よりも生徒ですから〝彼女〟なんてあり得ません」
と言いながら、みのりは我ながら自分の言ってることに呆れてしまう。
みのりが恋してやまない〝彼氏〟は、二俣と同じ立場の遼太郎なのだから。
その時、修羅場の中からまた俊次の大きな声が響いてくる。
「ガァット——ッ!!」
その声のあまりにもすごい気迫に、みのりは思わず視線を攫われる。