Rhapsody in Love 〜二人の休日〜

・OB会 ③





俊次や二俣がみのりにいろいろとちょっかいを出すことを、落ち着かない気持ちで見ていたのは遼太郎だ。

今もOBの一人がみのりに声をかけていて、遼太郎は本当に気が気ではない。
遼太郎自身も楽しみにしていた肝心の試合なのに、遼太郎はなかなか集中しきれないでいた。


——高校生の時は、先生がそこにいてくれるだけで、翼が生えたみたいプレーできてたのに……。


みのりの視線の先に他の男がいる……。
みのりが〝自分のもの〟となった途端に、そんな些細なことまでチェックしてしまう自分が、なんだか心が狭い小者になった感じがして情けなかった。


でも、今は本当にそんなことさえも考えている場合ではない。
遼太郎の意思にかかわらず、パスは回ってくる。うわの空の状態でタックルされると、大怪我してしまうかもしれない。


この試合に限っては押し合ってはいけないはずのスクラムなのに、高校生が無意識に押してしまうので息が合わず、フォワードの選手たちが何度も組み直している。その間、待つことしか出来ないこともあって、遼太郎はついつい視線をみのりの方へ向けてしまう。

すると、またみのりと目が合った。
みのりの視線は、ボールのあるスクラムの場所ではなく、じっと遼太郎の方へ向けられていた。


ドキン!と遼太郎の胸が反応したと同時に、みのりはニッコリと満たされて優しい笑みを投げかけてくれる。

あれは俊次にでも二俣にでもない、遼太郎にだけ向けてくれる笑顔だった。


その瞬間、遼太郎の体中に、一気に活力という血液が巡り始める。隅々にまでそれが行き渡ると、まるで高校生の時のデジャヴのような(みなぎ)る感覚が遼太郎を包んだ。


遼太郎は唇を噛んで、


——頑張ります…!


と、その決意をみのりに眼差しで伝えると、その目をスクラムから出てくるボールに集中させた。



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