Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「先生!もう始まってますよ。ボール、集めてください」
——ハッ…!!
遼太郎に声をかけられて、みのりが我に返った時には、中央にあるボールは半分になっていた。とりあえずボールを1個持って、自分の場所に戻ろうとした時、子どもの一人がみのりの前を横切った。
——うわっ!!危ないっ…!!
ぶつかりそうになるのを、すんでのところで回避する。子どもを避けながら移動するみのりは、まるで千鳥足の酔っ払いみたいだった。
その姿に、遼太郎の表情が思わず笑みを含んでしまう。
「ほら、先生。幼稚園児相手に負けてられないですよ」
「うん!頑張る!!」
遼太郎に応援されて、もはやみのりの意識に〝手加減〟というものはなくなった。
既に、真ん中にはボールは無くなっていたので、他の子が確保しているボールを奪ってくるしかない。
「うわー!ボクのボール、先生に取られたー」
と、人聞きの悪いことを言われても、みのりは〝これはゲームだ〟と割り切って、対等に、そして真剣に取り組む。
すると、子ども達も幼稚園児とはいえ、目つきがマジになる。そんな子ども達を、遼太郎は鼓舞した。
「さあ、みんな頑張れ!先生に負けるな!」