Rhapsody in Love 〜二人の休日〜


——俊次くん、好きな子の話なんてしないし……。女の子のこと可愛いなって思うことあるのかな?


その心があれば、あんなに近くにいてあんなに可愛い愛のことを、そう思わないはずはない。



みのりが職員室へ戻ってきて、給湯室でコーヒーを淹れ始めると、芳しい薫りが職員室中に漂った。匂いに釣られて、数人の教師たちがやってくる。


「仲松先生のコーヒーって、本当に美味しいよね。普段は忙しいからなかなか淹れてもらえないけど、今日はラッキーだったな」


と言ってくれたのは、同じ日本史が専門の浜田だ。それに対して、みのりも浜田のカップにコーヒーを注ぎながらにっこり笑って答えた。


「浜田先生、痛風にはコーヒーがいいらしいから、どんどん飲んでください。牛乳入れるともっといいらしいですよ」

「え?俺が痛風だったって知ってたの?」


目を丸くする浜田に、みのりはフフフと表情に笑いを含ませた。


「地歴科の忘年会で、あんなに大好きなビールを飲んでなかったから、気づいてましたよ」


アハハ…と周囲の教師からも笑いが湧く。そんな和やかな空気の給湯室から、みのりはマグカップを手に自分の机へと戻った。


そして、コーヒーを飲み、サンドイッチを食べながら、また愛と俊次のことを考える。


——近くにいるのに、遠いんだよね……。


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