Rhapsody in Love 〜二人の休日〜


「前に、先生が城跡とかそういう所に行きたいときには、俺が一緒に行くって言ってましたよね?」

「そう……だね」


遼太郎がそう言っていた時のことは、みのりもよく覚えていた。

遼太郎の卒業式の後、間を置かずに行った初めてのデートも城跡だった。その時も、遼太郎は『女の人が一人でこんな人気(ひとけ)のない所に来てはいけない』と本気で叱ってくれて、『もし行きたいときには一緒に行く』と約束してくれていた。

だけどみのりは、あの数週間後、優しく差し伸べられていた遼太郎の手を、自ら拒んでしまった。あの時の幸せな時間をすべて台無しにするくらい、遼太郎をものすごく傷つけてしまった。
それなのに、遼太郎はあの時の約束を、今でも守ってくれようとしている。

あの城跡に行った時のことを思い出すと、みのりは今でも胸が詰まって、涙が込み上げてくる。


突然涙ぐんでしまったみのりを見て、遼太郎がギョッとする。どうしてみのりがそんな反応を見せたのか分からず、戸惑ってしまう。その遼太郎の表情に気づいたみのりは、これ以上泣いてしまわないように、目を(しばた)かせて懸命に涙を抑え込んだ。

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