Rhapsody in Love 〜二人の休日〜


「詳しい住所は古庄先生が後からメールで教えてくれるから、とりあえず直原市の方へ向かうんだけど、その前に衛藤菓子舗へ行ってくれる?」


気を取り直したようにみのりがそう言ったので、遼太郎も涙の理由は詮索することはせず、問い返す。


「え?衛藤菓子舗って、……エトちゃんの家?」

「そう、衛藤くん、元気にしてるかな?会いに行ってみよう」

「ええ?!」


遼太郎はみのりの真意が分からず、ドギマギした。遼太郎がみのりと付き合ってることを知ってるのは、二俣だけだ。衛藤に秘密にしなければならないわけではないが、わざわざ宣言しに行く必要もない。すると、みのりはフフッと笑った。


「ウソだよ。衛藤くんに会いに行くわけじゃなくて、古庄先生の家に行くのに、お土産がいるでしょう?せっかくだから、衛藤くんちの美味しい羊羹でも持って行こうと思って」

「そっか、お土産……」


遼太郎は納得して、車のエンジンをかけて発車させた。

江戸時代からの古い街並み。卯建(うだつ)が上がる商店が立ち並ぶ中に、衛藤菓子舗はある。人が行き交う細い路地をゆっくり車を走らせて、店の隣にある駐車場に駐車させる。


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