Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
高校三年間、ラグビー部で遼太郎と苦楽を共にした衛藤は、この店の御曹司だ。高校を卒業した後は大学へは行かず、職人として腕を磨くための修行をしている。
「遼ちゃんは衛藤くんに会いたいかもしれないけど、今日は我慢してね。すぐ買ってくるから、待ってて」
と言って、みのりはするりと車を降りると、走って店の中に入っていった。
——別に、エトちゃんに会いたいわけじゃないけど。逆にエトちゃんに会ってしまったら、なんて説明しよう……。
衛藤だけではない。こんな人通りの多い所へ来ると、知り合いに見られているんじゃないかと、遼太郎はドキドキする。
だけど、何も悪いことをしているわけじゃない。
不倫をしているわけでもなければ、もう教師と生徒でもない。多少の罪悪感があるとすれば、親に黙ってすでに帰省しているくらいだ。
だから、もし両親がみのりのことを知ることになっても、胸を張っていればいい。みのりはあんなにも素晴らしい女性なのだから、そんな人が彼女だなんて、むしろ誇るべきことだ。
……と考えたところで、遼太郎は思い直す。
——いや、やっぱ、親に知られるのはまずいな。俊次が知ることになったら、絶対面倒なことになるぞ。せめて、先生が転勤するか、俊次が卒業するまでは秘密にしとかないと……。
そんなことを思ってると、みのりが紙の手提げ袋を手に車へと戻ってきた。