Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
古庄の感覚では、生徒との恋愛は絶対にタブーだった。でも、みのりと遼太郎は、それとは根本的に違うらしい。
そして、古庄はかつてみのりと話をした〝好きな人〟のことを思い出した。
「そういえば、ねえさん……。好きな人はラガーマンのいい男だって言ってたよな?」
「ふふふ…、そういうことよ。…あ、これ、お土産。衛藤くんところの羊羹」
「お、衛藤菓子舗の羊羹。久しぶりだな。『衛藤くん』って、生徒の家なんだ?」
「うん。遼ちゃんと同級で、日本史教えてて。彼もラグビー部だったのよ?」
そんなやり取りを聞きながら、遼太郎は自分を〝彼氏〟だと紹介してくれたことが、殊の外嬉しかった。多分これで、古庄を牽制しなくてもよくなるはずだ。
「それで、来た早々申し訳ないんだけど、案内してくれる?」
「ああ、そうだったね」
みのりがここへ来た目的に話題を戻した時、屋敷の方から人の声が聞こえてきた。
「和彦の嫁さんが来たって?本当か?!」
「嫌だ、お父さん。まだ『嫁さん』じゃないのよ。焦ったらダメよ」
そんな話をしながら、初老の男女が到着した車の方へ向かって来る。