Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
バックミラー越しに、古庄が遼太郎と目を合わせて言った。
遼太郎は、心の中を読まれていることにドキリとする。もしかして、不満が顔に出ていたのだろうか…。
「そんな所だとは知らなくて、古庄先生にも迷惑かけてしまって、ごめんなさいね」
かたや、みのりは遼太郎の心を知ってか知らずか、古庄へと心を配った。
「いや、いいんだよ。家にいたって、掃除をさせられるだけだしね」
「年末の大掃除?立派なお屋敷だから、大変だよね」
「はあ…、立派っていうか、古いばかりだよ」
「そりゃ、江戸中期くらいの建物だから古いよね。県指定の文化財でしょ?」
「へぇー、ねえさん、よく知ってる。さすがだね」
「私は地元の大学出てるし、そういうの、専門分野だから」
遼太郎が黙っている間にも、みのりと古庄の会話が続いていくけれど、遼太郎にはその間に割って入ることができない。みのりと古庄の間には、単なる同僚でも普通の友人でもない、独特の空気感あった。
遼太郎は古庄を邪魔者だと思っていたが、少し思い直した。今日でなくとも、みのりはいつかは古庄家の山にある遺跡に来たはずだ。その時、遼太郎が側にいなかったら、古庄と二人きりで来ることになっていたに違いない。