Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
だけど、黄昏時となり、ここに留まっていられる時間も終わろうとしていた。早く山を下りなければ、ただでさえ迷いやすい道が闇に閉ざされてしまう。
「ねえさん、名残惜しいだろうけど、そろそろ下りようか」
古庄が声をかけるとみのりも頷き、登ってきたときと同じように、古庄に続いて歩き始めた。
しかし、楽だと思われた下りの方が、ドンくさいみのりには難しかった。
「……ぅわっ…!!」
ほんの数十メートルしか進んでいないのに、整備されていない道は、二度もみのりの足を滑らせた。その度に、後ろに控えていた遼太郎が、みのりの腕を掴んで転ぶのだけは阻止をした。
必然的に古庄はゆっくり進まざるを得ず、夕闇がどんどん濃さを増していく。
「……先生。先生を俺に背負わせてください」
そんな時、遼太郎がみのりに申し出た。
その申し出に、みのりはとんでもないと首を横に振る。
「その辺のリュックを背負うのと違うのよ?私を背負ってこんな道を下りるなんて、危険すぎる!」
「このまま暗くなる方が危険です。大丈夫、気をつけて下ります。はじめから背負って下りるつもりで、城跡まで行こうって言ったんです」
遼太郎に説得されても、みのりは首を縦には振らなかった。