Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
そんな遼太郎の様子に気づいたみのりは、〝下ろしてほしい〟と思った。でも、暗くなりつつあるこの状況で、これ以上足を引っ張れないと思い、黙って堪えた。
すると、みのりの代わりに古庄が声をかけた。
「狩野くん、疲れてきたな。よし、交代しよう」
古庄の言葉に、みのりの顔色が変わる。
「古庄先生が?ダメだよ。そこまで迷惑かけられない」
古庄には案内してもらうだけでも手間を取らせてるのに、その上背負わせるなんて、みのりはとても出来ないと思った。申し訳ないことに加え、遼太郎に古庄に背負われる姿を見せるのは抵抗があった。
「このまま疲労した狩野くんに任せてると危ないよ。かと言って、ねえさんに歩いてもらう猶予はない」
木々の枝の下は、日が出ている間でも薄暗い。日が落ちた今は、もうすぐお互いの顔さえ確認できなくなるだろう。
「先生、俺の状態が回復するまで、古庄先生にお願いしましょう」
遼太郎もみのりと古庄が密着するのは避けたかったが、背に腹は変えられなかった。遼太郎からも促されると、足を引っ張ってるみのりは従わざるを得なくなる。
遼太郎の背中から降りると、
「恐れ入ります」
と、小さくお辞儀をし、跪く古庄の背中に覆いかぶさった。
他人行儀なみのりに、古庄はフッと笑いを漏らして立ち上がって歩き始める。