Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
その様子を見て、また古庄はため息をつく。当てられているというより、戸惑いに近い感覚……。
空気を伝って、本当に想い合う二人の気持ちが古庄の心まで沁み込んでくるようだった。
——恋人同士って、こんな感じなのか?
それは古庄にはとって、未知の感覚だった。かつて自分にも〝彼女〟がいたこともあるが、その時の感覚とは全く違っていた。
古庄は、こんなふうに彼女だった女性を抱きしめてあげた記憶がない。こんなふうに抱きしめたいと思った記憶もない。
古庄がそんなことを思っていると、遼太郎が再びみのりを背負い、歩き出す態勢になった。
古庄も再び先導して歩き出す。そして、程なく山の木々の作る影の下を抜けた。
車が置いてある所に戻って来れたのは、夕闇の中にうっすらと相手の顔が確認できる頃だった。
「ギリギリ間に合ったね。あの時ねえさんを背負うって言った、狩野くんの判断は賢明だった」
車のエンジンをかけながら、古庄が遼太郎を讃えると、遼太郎は苦笑いをして言った。
「本当は、登る時も背負いたかったんですけど、そうすると先生は『城跡には行かない』って絶対言い出すと思ったんで、我慢しました」
こんなやり取りを聞いて、みのりは情けない思いに追い打ちをかけられる。