Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
「でも、やっぱり城跡まで登って良かったと思います。先生と一緒に遺跡に行くと視野が開けるというか、知らないことをたくさん知れて、本当に楽しいです」
「遼ちゃん……」
単に慰めようとしているのではなく、遼太郎の本心からそう言っているのは、みのりにはよく分かった。
「俺だってそうだよ。何にもない所に、どうしてそんなに行きたがるのかって最初は思ってたけど、ねえさんの話聞いてると見方が変わったよ。道端の石にも意味があるような気持ちになる。それに、俺の先祖にも興味が湧いたしね」
「古庄先生……ありが……うぅ……っ」
「……?ねえさん?」
みのりが言葉を詰まらせたので、古庄が様子を窺う。遼太郎が確かめると、みのりはまた涙を零していた。今度は古庄の言葉に感激したみたいだ。
「ああ…。もう俺も黙っとこ」
古庄がそう言って笑った。遼太郎も何も言わず、みのりの気持ちに寄り添うように、そっとその手を握った。みのりも頭を遼太郎の肩に預けて、息を抜いた。
車内は、目的を成し遂げられた心地よい達成感と、優しさに満ちた穏やかな空気に包まれていた。