Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
・遼太郎と古庄
通された座敷には、すでに〝宴会〟の準備が整っていた。
三人が城跡の山に行っている間に、古庄の両親があれこれ準備をして待ち構えていた。
そこまでしてもらう理由が見つけられないみのりは、及び腰になる。
「あの、私……、ほんとに〝嫁さん〟じゃないんですけど……」
すると、古庄が苦笑いしながら言った。
「こんな刺激のない山の中で暮らしていると、誰か来てくれるのが楽しみなんだ。うちの両親はいつもそれを、手ぐすね引いて待ってるんだよ。来たら最後、宴会という洗礼が待ち受けてる。だから、〝嫁さん〟は関係なく、気にしないで食べて帰ったらいいよ」
「はあ…」
みのりは並べられたご馳走を前に呆然としながら、遼太郎と顔を見合わせた。その時、
「和彦、『刺激がない』とは聞き捨てならんな。この前なんてな、うちの庭にイノシシが出たんだぞ!」
と、いきなり古庄父の語る武勇伝が始まる。
「イノシシか…」
遼太郎は思わず呟いた。
もしイノシシと遭遇したらどうやってみのりを守るべきか…と、とっさに考えてしまう。
すかさず、古庄父はその遼太郎の呟きを聞いて鼻息を荒くする。
「そう!イノシシ!でも、ここに来たのが運の尽きだ。儂のライフルで一発で仕留めてやった!!それでもって、今日ここで鍋になってるぞ!」