Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
食事が済んだ後も、古庄夫婦はみのりを挟んで話が尽きないようで、座敷を連れ出し、〝県指定重要文化財〟の建物を案内して回ってる。
「あれ、狩野くん。ねえさんと一緒に見て回らないの?」
古庄がビールを飲みながら問いかけると、遼太郎は苦笑いしながら言った。
「もう今日は、歴史の方もお腹いっぱいです」
上手いこと言う遼太郎に、古庄が「ハハハ!」と声を立てて笑った。
「ねえさん、うちの両親にああやって捕まってしまったから、しばらくは相手をしなきゃいけないだろうな。でもまあ、まだ今日は、うちの姉貴がいなくて良かったよ」
「本物のお『ねえさん』もいるんですね?」
遼太郎が冗談を含ませて合いの手を入れる。
「ああ、うん。今日は農業の研修とかでどこかに泊まりがけで行ってるけど、悪魔のような女だから、もしいたらもっと大変だっただろうね」
「……あ、悪魔ですか……」
どんな人物なのだろうと、遼太郎は頭の中で不穏な想像を巡らす。
「ま、ねえさんの方が、よっぽど姉さんらしいってことだ」
それが、古庄がみのりを〝ねえさん〟と慕う所以なのかもしれない。
遼太郎の目の前の鍋が、ほぼ空になってても火が点いたままになっている。カセットコンロのツマミを回して消火しながら、遼太郎の頭に先程の古庄父の話が過った。