Rhapsody in Love 〜二人の休日〜


「プリントの整理してる古庄先生の腕がマグカップに当たりそうだったら、()けてあげようとしただけなのよ」

「そしたら、ねえさん。お約束みたいに手を滑らして……。いやー、あの時のねえさんの顔を思い出すだけで、笑えてくるね」


古庄は堪えきれずに、ククク…と笑いをもらした。


「あの後、バッチリプリントを刷り直してる間も、ずーっとそうやって、くすくす笑ってたよね?」


みのりが目を据わらせて、古庄を見る。
そこで、その会話を聞いていた遼太郎が口を挟んだ。


「…あの、バッチリプリントってなんですか?」


「ああ、俺の作った地理の授業プリントのことだよ」


遼太郎の疑問に、古庄が思い出し笑いしながら、すかさず答えてくれる。


——ああ、『バッ地理』ってか。


こんなにスマートなイケメンなのに、何というコテコテのオヤジギャグ……。
そんな古庄のギャップを、遼太郎は面白く感じた。


「…ていうか、その話と違うの?じゃあ、私が監督に行った定期考査の答案がなくなったこと?」


「……えっ!?」


ちょっとシリアスな内容に、遼太郎はびっくりして声をあげてしまう。


「あの時は、大変だったね。ねえさんだけじゃない、考査を作った先生も授業担当の先生も、教務主任や教頭までも真っ青になったから」


「……なんだ。その話でもないのね?」


みのりがヤブヘビだったとばかりに、肩をすくめた。


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