Rhapsody in Love 〜二人の休日〜



「え?ミラクル…って、見つけたんですか?」


目を丸くする遼太郎に、古庄が得意そうな表情で眉を動かした。


「ねえさんの普段のドンくさい行動を考察してみて、もしかして他の非常勤講師の机と間違えてないか?って思ったんだ」


「『ドンくさい』って言うのは、余計だけどね」


「非常勤講師の机は、各学年の島ごとの同じ位置にあるんだ。学年を間違えて置いた可能性があるってね。間違えて置いた方の別の非常勤講師もその日は勤務日じゃなくて、間違いに気づかなかった」


「でも、先生たちみんなで探したって…。その時に確認しなかったんですか?」


「それが、間違えて置いた方の隣の先生の机が、いつもありえないほど散らかっててね。そこからプリントやらが雪崩落ちた時に巻き添えくって落っこちたらしくて、床の上じゃなくて机と机の間に挟まってたんだ。それを俺が見つけたってわけだ」


「みんな諦めてたのに、古庄先生は諦めないでずっと探してくれてたもんね。見つけてくれた時には、ホントに『心の友よ!』って思ったわ」


「ねえさん、……ジャイアンかよ」


古庄のツッコミに、アハハ!とみのりも声を立てて楽しげに笑った。


二人が一緒に働く間に、こんな出来事が積み重なって信頼関係が築かれていき、みのりの言う通り、本当に〝心の友〟になり得たのだろう。

二人の間の独特な空気感の理由を、遼太郎は理解できたような気がした。
そして、遼太郎自身も、古庄とは教師と生徒という関係ではなく、友人のようになれたと感じていた。





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