Rhapsody in Love 〜二人の休日〜
そして、遼太郎が左手でみのりの右手を取って言う。
「それじゃ、眠らないで頑張ってください。先生との時間は、すごく大切だから。一日だって、もっと長くてもいいくらいです」
暗かったけれど、遼太郎が切れ長の優しい目でいつものように微笑んでくれているのが、みのりには見えるようだった。
その時、スマホのメールの着信音が鳴った。
駅の近くになって、ようやく通信ができる場所まで来たらしい。
「ん?遼ちゃんの音?」
「いや、俺は通知音はオフにしてます」
「じゃ、私?……あ、俊次くんからメールが来てる」
「え、俊次から?」
みのりの個人的なやり取りには関与するべきではないと思ってても、相手が俊次だとやっぱり気になってしまう。
「うん、明日の部活、午後からなんだって、だから個別指導を1時からにしてほしいんだって」
「明日も個別指導するんですか?」
「これも、仕事だからね」
「………」
「でも、助かった。今日の疲労度で明日朝からの仕事はきついなぁ…って思ってたの。明日の午前中も休みを取れば、ちょっとはゆっくりできるから」
みのりはそこまで言葉を続けて、何も反応してくれない遼太郎の様子を窺った。
遼太郎は少し考え込んでから、ためらいがちに口を開く。
「俺が高校生のとき、先生は仕事だから俺の個別指導をしてくれてたんですか?」
「は……?」