「会いたくなったら空を見ろ」
階段が急な気がする。

屋上に続く重いドアを開けた。

昨日も一昨日も、ドアは私が開けたのだ。

佐川ももかが「私はか弱いからあなたが開けろ」とでも言うような視線を突き刺したのだ。なんていい身分。そう思わずにはいられない。

生ぬるい風が額を逆撫でする。日光が差し込み、蝉の鳴き声が体にまとわりつく。まあ、佐川ももかよりは涼しいけれど。

屋上全体に目線を走らせた。

「あ……」

端のほうに、影井幸磨がいた。

お前来るのかよ⁈

一人が良かった、のに……。

そしたら、くるりと振り返った。幸磨の目が、私を捉える。私も目を合わせてしまたけれど、心の声は聞こえなかった。何も考えていない、のかな?

口の端をゆっくり持ち上げて相変わらずのキラキラ笑顔を向けた。

あんなの、私にはできないだろうな。

だから、自分なりの精一杯の笑顔を向けた。
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