アイドルたちに溺愛されて可愛がられて
思いっきり腕を引かれて連れ込まれたのは、誰もいない理科室。
薬品の香りがツーンと鼻につく。
莉音くんが私の体を包み込むように押さえつける。
私、アイドルとこんな近くに……
「しーっ」
ウインクをして私の口に莉音くんの人差し指が触れる。
胸がドキッと鳴る。
鼓動が早い。
心臓が口から飛び出してきそうだ。
すると、ドアの向こうの廊下から騒がしい足音が聞こえてきた。
「あれ?莉音くんどこ?」
「あっちじゃない?」
「行こ!」
ドタバタとその足音は去っていく。
「んー、もう大丈夫かな?」
莉音くんはへへっと笑う。
「一体どうして教室に!?」
「愛華ちゃんとお話したくて」
私に向けられる笑顔に、頭がクラクラしてくる。
「もう少し落ち着いたら隠れ家に行こっか」
どうやら私には拒否権はないらしい。
しばらく理科室に滞在して、私の乱れていた呼吸が整った頃、周りを警戒しつつそっと隠れ家である空き教室に向かった。