アイドルたちに溺愛されて可愛がられて




放課後になり、帰る支度をする。

いつも通り授業を受け、給食を食べ、休み時間は心桜とたわいない話をして……特別なことは起きなかった。

そんなこともあり、今朝あったことは、すっかり忘れていた。

帰ろうとカバンを持って立ち上がった時に、結菜から預かっている色紙のことを思い出す。

あの空き教室に行けば、彼らに会えるだろうか。

いや、私なんかが会いに行ってもいいのだろうか。

結菜には会えなかったと言って諦めてもらおう。

そう思った矢先、今日もまた廊下がざわめきだす。

なんだか嫌な予感がした。



「颯汰くーん!」

「千秋くーん!」



廊下から彼らを呼ぶ声がする。



「ねぇ、愛華、もしかして」



近くにいた心桜が私に声をかける。

まさか私を探してるんじゃ……

そんな私と心桜の予感は当たることになる。



「あーいかちゃん」



教室のドアにもたれかかって私の名前を呼ぶのは千秋くん。



「お迎えに上がりました、僕たちのお姫様」



爽やかスマイルでとんでもないことを口にする颯汰くん。

教室や廊下から黄色い声が上がる。

彼らの笑顔に何人かが倒れかけていたくらいだ。




< 46 / 122 >

この作品をシェア

pagetop