アイドルたちに溺愛されて可愛がられて
今出ていくとまた彼女たちにバレそうだったので、しばらくこの物陰に隠れていることにした。
人が来ない建物の裏ということもあって、ここはとっても静かだ。
そんな空間に廉くんとふたりきり。
廉くんは帽子に伊達メガネをしているけれど、そこから見える瞳はやっぱりイケメンで、真っ直ぐ見ることはできない。
心臓がなかなか落ち着かなくて、私は地面を見ているしかなかった。
「廉くんはなんでアイドルになったの?」
無言の空間にいてもたってもいられなくなって、そう質問してみた。
アイドルってどんな経緯でなるんだろう。
アイドルファン歴が少ない私にはわからない。
小さな私の疑問だった。
「俺は親に勝手に応募されてて、何もしなくても受かって、勝手にデビューが決まった。アイドルを目指して頑張ってきたアイツらとは違う」
「えっ?」
私の質問に答えてくれた廉くんは、どこか遠くを見ている。
「こんな俺がデビューするとか迷惑だろ」
そう呟いた廉くんの言葉を、私は聞き流すことができなかった。
「そんなこと……」
「あっ、電話」
そんなことない。
そう言おうとしたのと同時に、廉くんのスマートフォンに電話がかかってきた。