アイドルたちに溺愛されて可愛がられて
「えっ、どういうことですか?」
潮見さんの言っている意味がよくわからない。
私は颯汰くんから撮影現場に来て欲しいという連絡しか受けていない。
私が何かに“ぴったり”だという意味深な発言はしていたけれど。
それがなんのことを指しているのかはわからないでいた。
もしかしたら、それがこれなのかもしれない。
「あら、聞いてなかった?今日もPV撮影の続きを取ってたんだけど相手役の女の子が急に来られなくなっちゃってね……」
「それは大変ですね」
PV撮影に出演してもらう子が急に来られなくなってしまったのはそれは大変なことだと思う。
だって、撮影が進まなくなってしまったのだから。
「それで代わりの子探してたんだけど都合合う子が全然居なくて、千秋が愛華ちゃんを推薦してね、監督からもオッケー貰えたから声をかけたってわけよ」
「へ、へぇ……」
私に声がかかった経緯は何となくわかった。
けれど、本当に私なんかでいいのだろうか?
撮影なんてホームビデオくらいで本格的なのはされたことないし、そもそも私はただの一般人で俳優でもモデルでもアイドルでもない。
「あの、その……私でいいんですか?」
「うん!あなたがいいの!平凡な一般人感がとってもPVに合ってるのよ!」
「はぁ……」
平凡な一般人感……
喜んでいいのやらどうなのやら。
私の心情は複雑だった。