アイドルたちに溺愛されて可愛がられて
「すみません、体操着貸してもらえませんか?」
「体操着ね、いいわよ。忘れちゃった?」
「……はい」
保健室の先生は優しくてすぐに体操着を貸してくれた。
急いで着替えていかないと。
授業に遅刻してしまう。
教室に戻る時間もないと判断した私は、保健室で着替えさせてもらうことにした。
「ありがとうございました」
ぺこりと先生に頭を下げて保健室を出る。
体育館は保健室と同じ1階だからすぐだ。
本当は走ってはいけない廊下を走って、なんとか授業開始時間前に間に合うことができた。
「愛華ー!こっちこっち!」
「はぁっ、はぁっ、間に合ってよかった」
体操館では、心桜が手を振って待ってくれていた。
それだけで安心する。
心桜の元へと向かう途中、ボソッとつぶやく声が聞こえた。
「間に合ったのかよ」
「チッ」
それは紛れもなく私に向けられたものだった。
涙をこらえて、グッと唇を噛む。
「愛華、大丈夫だったー?」
「うん、なんとか」
心桜の前では、それを隠すようにニッと笑った。