悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!
同じクラスだけど、選択科目が違うジュリアン様は先に来られていて、私を見ると、ほんわかと心が温められるような笑みをくれた。
幼い頃からずっと見ているのに、未だに慣れずに胸が高鳴る。
彼がセシルに目を向けたので、「慣れない間は昼食をご一緒しようと思って」と言い訳のように私は説明した。
「さすが、僕のルビーは優しいね」
ジュリアン様がにっこり笑う。
そんなことは全然ないんですけどね。
「セシル、こちらは私の婚約者のジュリアン王子よ」
念のため、ジュリアン様を紹介すると、セシルは驚きに固まっていた。
そりゃそうよね。
こんな麗しい人はなかなかいない上に、王子様だもんね。
でも、私の婚約者なのよ?
そこんところよろしくね。
ぽっと頬を染め、かわいらしい顔でセシルは挨拶をする。
「ご無沙汰しております、ジュリアン王子。セシル・マクスウェルです。同席させていただいてもよろしいのでしょうか?」
「あぁ、前に王宮で会ったね。もちろん、どうぞ?」
ジュリアン様とセシルは初対面じゃなかったんだ。考えたら聖女に任命されるんだもの、王家が関与していて当たり前よね。
私はジュリアン様の前に、セシルは私の隣りに座った。
ジュリアン様はセシルに一言かけただけで、私に向き直り、週末の予定を聞いてくる。
思ったよりジュリアンが平然としているので、なぜか私が焦った。
(このかわいい子を見て、なんにも思わないの!?)
セシルの方はチラチラとジュリアン様の方を見ながら、ご飯を食べ始める。
その頬は薔薇色に染まっていて、一目惚れした女の子の表情をしている。
大きな目がうるうるしていて、熱を帯びていて、一層かわいらしい。
あーあ、やっぱり惚れるよねー。うんうん、わかるわ。見た目は天使だし、中身も天使だし、十八歳の男性に対して天使ってなによ?と思うけど、本当に神々しいからしょうがないわ。
ジュリアン様は本当に素敵で優しいの。
後からやってきたリカルドとダンガルドはセシルを紹介すると、ポーッとなっていた。
セシルがにっこり笑うと周囲に花が咲くようだから、普通そうなるわよねー。
「は、は、初めまして。ダンガルド・ケインと申します。以後、お見知りおきを……」
「固いよ、ダン。僕はリカルド・コリンズ。よろしくね、セシル」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ダンガルド様、リカルド様。いろいろ教えてくださいね」
「「もちろん!」」
彼らは声を合わせて答えた。
一瞬でセシルに夢中になるリカルドとダンガルドに複雑な気分になる。
さすがヒロイン。あっという間にメロメロじゃない。
昨日までは私を崇拝するように見ていたのに、もう見向きもされない。
今後の風向きを暗示しているようで、私は不安になった。
「ルビー」
優しく名を呼ばれた。
いつの間にか隣りの席に座っていたジュリアン様に手を取られる。ジュリアン様は私の手を両手で包み込み、親指でそっと甲をなでた。
「なにがそんなに不安なの?」
水色のキラキラ光る瞳が心配そうに私を覗き込む。
ジュリアン様のこれくらいのスキンシップは日常なので、誰も気に留めていない。
私以外は。
触れられた手から熱がじわじわ伝わって、私を温めると同時に焦らせる。心臓がバクバク音を立て、頬にも熱を送る。
まさに『あなたの瞳に囚われて』動けない。
でも、こんなジュリアン様もきっと今だけ。そのうち、セシルしか見なくなるんだろう。
だから、今のうちに覚えておこう。ジュリアン様に好きになってもらって、こんなに優しくされたことを。
これから、冷たくされたとしても、催眠術を使った罰だわ。
切ない気持ちを抑えて、彼の瞳を見つめて、にっこり笑った。
「ジュリアン様、なんでもないですわ。ちょっと考えごとをして、ぼーっとしてしまっただけ」
そう言うと、ジュリアン様は綺麗なお顔を曇らせた。
そんな憂いを帯びた表情もとっても素敵と思ってしまう。
ジュリアン様は私の頬に手を伸ばして、指先でなでた。
「君は……なにも言ってくれないんだね」
「だって、本当になんでもないんですもの」
「そう。なにかあったら僕を頼ってね」
「はい、心強いですわ」
いつまでこうしていられるのかな?
私は頬にあてられたジュリアン様の手に自分の手を重ねて、微笑んだ。
幼い頃からずっと見ているのに、未だに慣れずに胸が高鳴る。
彼がセシルに目を向けたので、「慣れない間は昼食をご一緒しようと思って」と言い訳のように私は説明した。
「さすが、僕のルビーは優しいね」
ジュリアン様がにっこり笑う。
そんなことは全然ないんですけどね。
「セシル、こちらは私の婚約者のジュリアン王子よ」
念のため、ジュリアン様を紹介すると、セシルは驚きに固まっていた。
そりゃそうよね。
こんな麗しい人はなかなかいない上に、王子様だもんね。
でも、私の婚約者なのよ?
そこんところよろしくね。
ぽっと頬を染め、かわいらしい顔でセシルは挨拶をする。
「ご無沙汰しております、ジュリアン王子。セシル・マクスウェルです。同席させていただいてもよろしいのでしょうか?」
「あぁ、前に王宮で会ったね。もちろん、どうぞ?」
ジュリアン様とセシルは初対面じゃなかったんだ。考えたら聖女に任命されるんだもの、王家が関与していて当たり前よね。
私はジュリアン様の前に、セシルは私の隣りに座った。
ジュリアン様はセシルに一言かけただけで、私に向き直り、週末の予定を聞いてくる。
思ったよりジュリアンが平然としているので、なぜか私が焦った。
(このかわいい子を見て、なんにも思わないの!?)
セシルの方はチラチラとジュリアン様の方を見ながら、ご飯を食べ始める。
その頬は薔薇色に染まっていて、一目惚れした女の子の表情をしている。
大きな目がうるうるしていて、熱を帯びていて、一層かわいらしい。
あーあ、やっぱり惚れるよねー。うんうん、わかるわ。見た目は天使だし、中身も天使だし、十八歳の男性に対して天使ってなによ?と思うけど、本当に神々しいからしょうがないわ。
ジュリアン様は本当に素敵で優しいの。
後からやってきたリカルドとダンガルドはセシルを紹介すると、ポーッとなっていた。
セシルがにっこり笑うと周囲に花が咲くようだから、普通そうなるわよねー。
「は、は、初めまして。ダンガルド・ケインと申します。以後、お見知りおきを……」
「固いよ、ダン。僕はリカルド・コリンズ。よろしくね、セシル」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ダンガルド様、リカルド様。いろいろ教えてくださいね」
「「もちろん!」」
彼らは声を合わせて答えた。
一瞬でセシルに夢中になるリカルドとダンガルドに複雑な気分になる。
さすがヒロイン。あっという間にメロメロじゃない。
昨日までは私を崇拝するように見ていたのに、もう見向きもされない。
今後の風向きを暗示しているようで、私は不安になった。
「ルビー」
優しく名を呼ばれた。
いつの間にか隣りの席に座っていたジュリアン様に手を取られる。ジュリアン様は私の手を両手で包み込み、親指でそっと甲をなでた。
「なにがそんなに不安なの?」
水色のキラキラ光る瞳が心配そうに私を覗き込む。
ジュリアン様のこれくらいのスキンシップは日常なので、誰も気に留めていない。
私以外は。
触れられた手から熱がじわじわ伝わって、私を温めると同時に焦らせる。心臓がバクバク音を立て、頬にも熱を送る。
まさに『あなたの瞳に囚われて』動けない。
でも、こんなジュリアン様もきっと今だけ。そのうち、セシルしか見なくなるんだろう。
だから、今のうちに覚えておこう。ジュリアン様に好きになってもらって、こんなに優しくされたことを。
これから、冷たくされたとしても、催眠術を使った罰だわ。
切ない気持ちを抑えて、彼の瞳を見つめて、にっこり笑った。
「ジュリアン様、なんでもないですわ。ちょっと考えごとをして、ぼーっとしてしまっただけ」
そう言うと、ジュリアン様は綺麗なお顔を曇らせた。
そんな憂いを帯びた表情もとっても素敵と思ってしまう。
ジュリアン様は私の頬に手を伸ばして、指先でなでた。
「君は……なにも言ってくれないんだね」
「だって、本当になんでもないんですもの」
「そう。なにかあったら僕を頼ってね」
「はい、心強いですわ」
いつまでこうしていられるのかな?
私は頬にあてられたジュリアン様の手に自分の手を重ねて、微笑んだ。