素敵後輩の隠し事
だけど今の城内君は……
「いい人だよ」
私は声を振り絞って伝えていた。
「私なんて守る価値もない人のことを、守ってくれた。
私の昔の話を聞いても馬鹿にしなかった」
「守る価値もない、なんて言わないでください。
矢田さんが僕のことを守ってくれるから、僕も守らなきゃと思うんです」
「……え?私がいつ、城内君のことを守ったの?」
思わず聞いていた。
私はいつも城内君に迷惑をかけてばかりだ。
同級生に会った時も、工場に行った時も。
城内君は私の問いには答えず、ふっと笑った。
そして相変わらず静かに続けた。
「僕のことを矢田さんに話すと、矢田さんはきっと僕が嫌いになると思います。
でも……これ以上いい人のふりをすることは出来ません」
胸がずきんと痛む。
これ以上いい人のふりが出来ないということは、やっぱり豹変するのだろうか。
私を見て、嘲笑うのだろうか。
ゆっくりと歩きながら、彼は今まで決して話さなかったその話を、私にした。