素敵後輩の隠し事
辺りがしーんと静まり返った。
ただ、まだ身体がガクガク震えている。
そんな醜い私に、城内君はジャケットを脱いでかけてくれる。
ふわっといい香りがして、少しずつ安心する。
城内君はあいつらみたいに、私を嘲笑ったりしないんだと思って。
「僕の地元で有名な悪い奴の名前を言ったんです」
「……え?」
「その人の知り合いですって」
「!?」
「矢田さんの出身地の話を聞いた時に、もしかしたら僕と近いかなと思って。
だから、一か八か言ってみたら、大正解でした」
城内君の地元は、私の地元と近いの?
それがまた恐怖を覚える。
もしかして、昔の私を知っているのだろうか。
私は、自分のことを知る人がいないこの地を選んだのに。
……地元から遠く離れた、この場所を。