Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜

メモを終えると、一花が桜士を見つめる。二重のパッチリとした一花の瞳には、頰を赤く染めている桜士が映っている。

（目が合うだけで、こんなにも苦しいなんて……）

心臓が止まってしまうのではないかと思うほど、桜士の胸は高鳴っている。夢のようなふわふわとした感覚を桜士は覚えていたのだが、バスが停留所に停まった刹那、現実に引き戻された。

「私は認めませんからね！！そんな甘えた産み方、許しませんよ！！」

「そうだ！！母さんに従うべきだ！！」

人目も憚らず、大きな声が前方から響いてくる。桜士が目を向けると、大きなお腹を抱えた妊婦がバスに乗車するところだった。その後ろから、妊婦の夫と思われる男性と、男性の母親と思われる中年女性が乗車し、妊婦に何やら怒っている。

桜士たちの近くにある優先席に妊婦は座ると、うんざりしたようにため息を吐いた。そして、バスの車内だというのに大声をまだ出している二人に冷ややかな視線を送りながら言う。