Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜
「お義母さん、太一(たいち)くん、何回も説明したし、先生からも言われたでしょ?この子を産むのは私だから、どんな産み方を選択しても間違いじゃないし、産み方で愛情が増えたり減ったりするわけじゃないって」

太一と呼ばれた男性も、男性の母親も、妊婦がそう言ったにも関わらず、「でもな!」と食ってかかる。

「母さんは、俺を腹を痛めて産んだんだぞ!麻酔を使って産むなんて甘えじゃないか!無痛分娩なんて、俺は認めないぞ!」

「そうよ!お腹を痛めてこそ、子どものことを大切に思えるのよ?母親としての最初の使命から逃げ出すなんて!」

平日の昼間とはいえ、バスの中には桜士たちの他にも七十代ほどの老夫婦や、学校を体調不良で早退したのであろう中学生、そして買い物袋を持った主婦らしき女性もいる。みんな、ギャアギャアと騒ぐ二人に対し、迷惑そうな目を向けていた。

「無痛分娩が甘えなんて、アイツら何もわかってないな。……ちょっと言ってくる」
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