Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜
バスジャック犯たちにそう質問をぶつけたのは、桜士の後ろに座っていた一花だった。恐らく、ヴェノムが妊婦を刺さないように質問をわざとぶつけたのだろうと桜士はすぐにわかった。一花の隣にいるモニカは、どこか驚いた顔を見せている。

「何でこんなことをしているのか、ねぇ……」

ヴェノムがそう言いながらニヤリと笑う。桜士は、Cerberusのメンバーを相手にした時のように背筋に寒気が走ったりはしなかったものの、どこか嫌な予感を感じていた。

「そんなの、「退屈」だからに決まってるだろ?大人はいいよな〜。車があればどこにだって行けるし、自由に使えるお金も時間もたっぷりある。でも俺たち学生はさ、親や先生に何もかも勝手にスケジュールを組まれて、平凡な毎日を送らされてる。可哀想だとは思わないか?だからこうして今、デカいことをやってんだよ!」

「犯罪がデカいことなんて、あり得ない……」

思わず、桜士は呟いてしまう。彼の頭の中にはかつて逮捕してきた犯罪者たちの顔が浮かんでいた。その中には、今回の彼らのように、犯罪を犯すことが成功への近道で最も注目を集めることだと勘違いをしている者もいた。だからこそ、桜士にはわかるのだ。
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