Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜

「結婚なんて私はしない。するとしても、お父さんとお母さんみたいな愛のない結婚なんて嫌」

藍が、何度言ったかわからないもはやお決まりの台詞を言うと、文雄はフッと笑って言う。

『お前がそう言うと思って、もう院長に話はつけてある。お前はもう病院を退職して医者じゃなくなる。そして、私が選んだ男と結婚するんだ』

何を言われているのか、一瞬藍は理解することができなかった。だが、言葉を意味を理解し、「ちょっと待ってよ、そんな急に……」と慌てて文雄に言う。その様子を桜士に見られてしまったが、気にしてはいられない。

だが、藍がどれだけ説得しようとも、文雄は聞き入れなかった。院長にも相談したものの、「結婚の心配をしてくれて、いいお父さんじゃないか」の一言だけだった。その瞬間、藍は全てに絶望し、何もかもどうでもよくなってしまったのだ。

食べることも、眠ることも、人として生きるのに必要なこと全てがどうでもよくなり、一瞬にして体重は減り、患者や一花たちに向けていた笑顔も作れなくなった。こうして、ボロボロになった藍は、会社のために用意された婚約者の元へ両親の手によって飾り立てられ、連れて行かれた。