Cherry Blossoms〜いのちのかたち〜
もしも、十と二人きりでカラオケに来たとしても、ここまで自由に楽しく桜士は過ごせない。常に公安警察という立場から肩に力が入っており、警戒してしまう。だがーーー。

(四月一日先生がいれば、何故か大丈夫な気がするんだ。不思議だ)

中学校で起きたテロ事件を桜士は思い出す。あんな絶望的な状況の中、一花たちは戦い、処置を行い、重症者は出たものの、死者は一人も出すことがなかった。

(四月一日先生……)

メニュー表を見てモニカたちと話す一花の横顔を見て、桜士は胸を高鳴らせる。すると、ヨハンに思い切り頭を叩かれそうになり、慌てて頭の位置を動かして避ける。ヨハンの舌打ちが聞こえた。

「何するんですか?」

桜士が訊ねると、ヨハンは不機嫌そうな顔をしながらマイクを渡してくる。マイクを手にしたアルオチが言った。

「もう最初の曲、入れちゃったから歌おう!!」

アルオチが入れたみんなで歌う曲は、とあるハリウッド映画の主題歌だった。内容は、とある連続殺人犯を追う女性捜査官が、その連続殺人犯を愛してしまうというものだったと桜士は記憶している。
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