眠り姫と生贄と命の天秤
 リコも髪を隠していた青い布を外した。後ろと横で止めた髪が耳から首筋にこぼれてくる。編んでまとめているのだが、長くて重さがあるので、時間がたつとほどけてくるのが常だった。

「ごはんにしよう。お腹すいたね」

 キトエも頷いて、敷いた革の上に食材を出し始める。

 古い干し肉から使おうと思って、リコは腰に下げた革袋をあけた。食材の革袋と、水袋、もうひとつ袋が入っている。中は瓶だ。さらにその瓶には、乾燥した植物がつまっていた。

 生贄の城から持ち出してきた、使用が禁じられている植物の瓶だ。指先に乗るほどの量を燃やして煙を吸えば、夢のような幻覚と感覚を得られる。手の平に乗るほどの大きさの瓶につまっているのは、ざっと見ても数百回ぶんの量だ。

 リコが使うために持ち出してきたのではない。城から逃げ出した生贄として追われている身だ。逃げるのに役立つこともあるかもしれないと思って持ってきた。使わずとも、多少の危険を冒して売れば、かなりの金額になる。キトエはリコが持つことを渋ったが、万が一のときのためということで納得してもらった。

< 12 / 68 >

この作品をシェア

pagetop