眠り姫と生贄と命の天秤

『魔女』と同等の魔法を使える者

 地面に敷いた革の上には、まだ干し肉にチーズ、ズッキーニにモロヘイヤにパンが残っていて、野菜は日持ちしないので食べきらないといけなかった。

「あ、そ、そうだね」

 何となくどぎまぎしたまま、リコは立ち上がって、火を挟んでキトエの向かいに元どおりに座った。

 本当はもう少し抱きしめ合っていたかった。けれどキトエは違うのかもしれないし、食事の途中だったので何も間違っていない。リコの『好き』のほうが、キトエのものより重いのかもしれない。

 キトエの顔を見ないように、あぶった干し肉をよくかんで、つかえとともに飲みこんだ。



 心地いい感覚から頭が落ちて、リコは目が覚めた。かたわらには革の上で横になって眠るキトエ、燃え尽きていないたき火。見上げると木の葉に縁どられた星の川に、満月が真ん中からふたつに割れた月がある。月は空の左側で、眠ってしまう前と位置があまり変わっていなかったので、座ったまま少し意識が落ちてしまっただけらしい。木の幹に背を預け直す。

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