眠り姫と生贄と命の天秤
キトエが走るほうへ、風を放つ。弓兵がいる? どこから狙われているのか分からない。
木々を抜けて視界がひらける。平野に浮かぶのは、並んで弓を構える人々の影、騎馬の影。見渡すと、大きく何重にも囲まれている。目では数えきれない。三百? 五百? ふたりを捕縛するために多勢を動かしているのだ。
耳を裂く音とともに矢の影が幾多も迫ってくる。
「メールオト」
手を横に振るう。
「下ろして!」
自ら放った風の圧力を受けながら、キトエの肩を叩いて地面へ下りる。今しがた抜けてきた木々のほうへも風を放つ。前方から途切れることなく注いでくる矢を風で舞い散らせる。
きりがない、矢がなくなるまで粘るのか? だめだ、時間がたてばたつほど、数が少ないこちらのほうがきっと不利になる。戦は素人だが、リコの本能がそう告げている。いくらリコが魔女でも、数が違いすぎる。
メールオトを放った一瞬のあと、リコが一番得意なイグニトを撃つしかない。撃って、人の壁を削って道を拓く。
「キトエ、イグニトを撃ったら一緒に走って」
木々を抜けて視界がひらける。平野に浮かぶのは、並んで弓を構える人々の影、騎馬の影。見渡すと、大きく何重にも囲まれている。目では数えきれない。三百? 五百? ふたりを捕縛するために多勢を動かしているのだ。
耳を裂く音とともに矢の影が幾多も迫ってくる。
「メールオト」
手を横に振るう。
「下ろして!」
自ら放った風の圧力を受けながら、キトエの肩を叩いて地面へ下りる。今しがた抜けてきた木々のほうへも風を放つ。前方から途切れることなく注いでくる矢を風で舞い散らせる。
きりがない、矢がなくなるまで粘るのか? だめだ、時間がたてばたつほど、数が少ないこちらのほうがきっと不利になる。戦は素人だが、リコの本能がそう告げている。いくらリコが魔女でも、数が違いすぎる。
メールオトを放った一瞬のあと、リコが一番得意なイグニトを撃つしかない。撃って、人の壁を削って道を拓く。
「キトエ、イグニトを撃ったら一緒に走って」