眠り姫と生贄と命の天秤
かたわらのキトエは、地に刺した剣に右手を預けて、よろめきそうになる体を支えている。目線も定まっておらず、傷の痛みで昏睡の呪法に耐えているのだろう。キトエは自力では逃げられない。リコが抱えて逃げるしかない。
円く壁のようにあたりを囲む軍勢はいまだ何も変わらない。ジヴィードを含めたこの軍勢の気を一度にそらさないと、逃げられない。そんな夢のような方法があるのか?
頭から、急速に体が冷える。
夢の、ような。
うまくいくか分からない。けれどそれしか浮かばない。
体に力を入れる。ジヴィードを見つめ返す。ひるむな。
生きたいと、決めたのだから。
「わたしが死ねばいいなんて、そんなこと分かってる。それでも、今わたしは死にたくない。わたしの罪は、わたしが考える。わたしの答えは、わたしが出す」
鋭く息を吸うのと同時に、息を吹きこまれた炎のように全身の魔力が肌の紋様を駆ける。
「ニグカイト」
リコの手の先から、景色がひしゃげる。前方のジヴィードと騎兵数人が馬ごと上から押し潰されるように崩れる。リコは腰の革袋に左手を入れて、瓶を高く投げた。
「ニグカイト」
円く壁のようにあたりを囲む軍勢はいまだ何も変わらない。ジヴィードを含めたこの軍勢の気を一度にそらさないと、逃げられない。そんな夢のような方法があるのか?
頭から、急速に体が冷える。
夢の、ような。
うまくいくか分からない。けれどそれしか浮かばない。
体に力を入れる。ジヴィードを見つめ返す。ひるむな。
生きたいと、決めたのだから。
「わたしが死ねばいいなんて、そんなこと分かってる。それでも、今わたしは死にたくない。わたしの罪は、わたしが考える。わたしの答えは、わたしが出す」
鋭く息を吸うのと同時に、息を吹きこまれた炎のように全身の魔力が肌の紋様を駆ける。
「ニグカイト」
リコの手の先から、景色がひしゃげる。前方のジヴィードと騎兵数人が馬ごと上から押し潰されるように崩れる。リコは腰の革袋に左手を入れて、瓶を高く投げた。
「ニグカイト」