眠り姫と生贄と命の天秤
ふと、前方にそびえる岩のあいだに、闇が深くなっている部分があることに気付く。近付いてみると、横穴のようだった。
「キトエ、一回下ろすね」
奥をのぞきたかったので、キトエを下ろして、岩肌を背にして座らせる。穴をのぞきこんでみると、先のほうが明るい。ひとりで中に入ってみるか迷ったが、キトエから目を離した隙に何かあったら困ると思い、キトエを抱きかかえて中へ入った。立って歩いても余裕のある横穴で、進むにつれて視界がひらけてくる。
出たのは背の高い岩に囲まれた円形の広場めいた場所だった。岩はリコの背丈の数倍ほど高さがあるが、上はあいていて空が見える。ここでキトエの手当てをしたい、とキトエを岩に寄りかからせて座らせた。
キトエの目が、虚ろながらもひらいているのを確認する。左肩は破れた服が赤黒く染まっていたが、傷口の血は乾いているようだった。リコは自分が悲痛な顔をしてしまっていることに気付いて、眉間に力を入れるのをやめた。そんな顔をしていたら、悪い考えに飲みこまれてしまう。
「キトエ。ここで手当てしたいんだけど、今どういう状態?」
「キトエ、一回下ろすね」
奥をのぞきたかったので、キトエを下ろして、岩肌を背にして座らせる。穴をのぞきこんでみると、先のほうが明るい。ひとりで中に入ってみるか迷ったが、キトエから目を離した隙に何かあったら困ると思い、キトエを抱きかかえて中へ入った。立って歩いても余裕のある横穴で、進むにつれて視界がひらけてくる。
出たのは背の高い岩に囲まれた円形の広場めいた場所だった。岩はリコの背丈の数倍ほど高さがあるが、上はあいていて空が見える。ここでキトエの手当てをしたい、とキトエを岩に寄りかからせて座らせた。
キトエの目が、虚ろながらもひらいているのを確認する。左肩は破れた服が赤黒く染まっていたが、傷口の血は乾いているようだった。リコは自分が悲痛な顔をしてしまっていることに気付いて、眉間に力を入れるのをやめた。そんな顔をしていたら、悪い考えに飲みこまれてしまう。
「キトエ。ここで手当てしたいんだけど、今どういう状態?」