眠り姫と生贄と命の天秤
手当てだけさせて
キトエはゆらゆら揺れる目を必死にひらいて、リコと視線を合わせようとしてくれる。
「意識が落ちそうなのを、痛みでとどめてる」
「じゃあ回復はかけないから。傷の手当てだけさせて」
布が入っている大きな荷物は置いてきてしまったので、スカートの裾を裂いて結んで、包帯を作る。傷口を洗うために服を脱がせたほうがいい、と気付いて、一瞬ためらう。けれどよこしまな感情で恥ずかしがっている場合ではない。
「傷洗うのに触るから、痛かったら言って」
キトエが力なく頷いたのを確認して、首元から上衣のくるみボタンを外していく。左腕だけ脱がせて、中に着ている半袖の裂けた袖をまくり上げた。意識を保つためとはいえ、えぐれた傷口はリコまで痛みを錯覚しそうなほどだった。化膿しないように、熱が出ないようにと祈りながら、弱く出した水で傷口を洗う。
「ごめんなさい……ありがとう。かばってくれて」
急ごしらえの包帯を巻いていく。痛むはずなのに、キトエの表情は意識を手放さないよう苦しそうなまま、変わらない。
「俺には、それくらいしかできない」
「意識が落ちそうなのを、痛みでとどめてる」
「じゃあ回復はかけないから。傷の手当てだけさせて」
布が入っている大きな荷物は置いてきてしまったので、スカートの裾を裂いて結んで、包帯を作る。傷口を洗うために服を脱がせたほうがいい、と気付いて、一瞬ためらう。けれどよこしまな感情で恥ずかしがっている場合ではない。
「傷洗うのに触るから、痛かったら言って」
キトエが力なく頷いたのを確認して、首元から上衣のくるみボタンを外していく。左腕だけ脱がせて、中に着ている半袖の裂けた袖をまくり上げた。意識を保つためとはいえ、えぐれた傷口はリコまで痛みを錯覚しそうなほどだった。化膿しないように、熱が出ないようにと祈りながら、弱く出した水で傷口を洗う。
「ごめんなさい……ありがとう。かばってくれて」
急ごしらえの包帯を巻いていく。痛むはずなのに、キトエの表情は意識を手放さないよう苦しそうなまま、変わらない。
「俺には、それくらいしかできない」