眠り姫と生贄と命の天秤
「ごめんね、もう一回させて」

 考えずに唇を合わせて、できるかぎり魔力をこめて、浄化の魔法を口移しした。

「どう?」

 キトエは目をまたたかせて、さまよわせる。

「すまない、分からない。少し、意識が落ちそうなのが薄まってるような……」

 リコは言葉を継げなくなる。効いていたとしても、分からない程度だ。これでは。

 引かれていた腕から、キトエの手が離れた。抱き寄せられた背はそのままだ。

 残された可能性から、言葉にするのをためらった。効く保証はない。けれどもう、それしか浮かばない。

 リコはいまだつらそうに瞳を細めているキトエを見つめて、顔を下げた。

「ごめんなさい……わたしと、体をつなげて」

 返ってくる言葉が怖くて、すぐに口をひらく。

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