眠り姫と生贄と命の天秤
キトエは不思議そうな顔をして、微笑んだ。腰に両手で触れられて、紋様に沿って撫でられた。声を上げてしまって、くすぐったかったのと驚いたのとで、キトエの上に全部、座りこんだ。
リコの声に、キトエの小さな声も混ざって、キトエも同じような感覚なのだろうか、と頭の片隅で思った。けれど考え続けられる余裕はなくて、体が跳ねて、キトエにすがりつく。
「痛い?」
「ちょっ、と」
キトエはリコを気遣って、まだ動いていないというのに。
頬に当てられた手に、顔を上げさせられる。唇を親指で割られる。
「かみしめると余計痛いよ」
指のかわりに、キスで唇をひらかされた。考えたそばから溶けていく思考で、本当の目的を唱える。
「シムリルカ」
体がおかしくなっているのか、それとも気のせいではないのか、温かくて穏やかで不思議な感じがした。キトエは魔法が使えないから魔力はほんのわずかしかないはずなのに、混ざり合って全身に運ばれていく気がした。
「シムリルカ」
唱える。今、リコができる最上の方法で、唱えられるだけ唱える。
リコの声に、キトエの小さな声も混ざって、キトエも同じような感覚なのだろうか、と頭の片隅で思った。けれど考え続けられる余裕はなくて、体が跳ねて、キトエにすがりつく。
「痛い?」
「ちょっ、と」
キトエはリコを気遣って、まだ動いていないというのに。
頬に当てられた手に、顔を上げさせられる。唇を親指で割られる。
「かみしめると余計痛いよ」
指のかわりに、キスで唇をひらかされた。考えたそばから溶けていく思考で、本当の目的を唱える。
「シムリルカ」
体がおかしくなっているのか、それとも気のせいではないのか、温かくて穏やかで不思議な感じがした。キトエは魔法が使えないから魔力はほんのわずかしかないはずなのに、混ざり合って全身に運ばれていく気がした。
「シムリルカ」
唱える。今、リコができる最上の方法で、唱えられるだけ唱える。