眠り姫と生贄と命の天秤
「さっきも言ったけど、嫌なわけない。逆に俺をそんなに甘やかさないでほしい。だってリコに触りたいし声が聴きたいんだから、ごほうびだ」

 おかしそうに微笑まれる。

「ばか」

 ほんの少し先の未来でさえ、分からない。泣きそうになるのをこらえて、笑顔を作った。

 もう一度つながりをもって、リコは魔力が尽きるまでキトエに浄化の魔法をかけた。

 まだ、泣くのは早い。



 目が覚めて、リコは眠っていたことに気付いた。即座に意識がはっきりする。まだ空は深く暗く、真ん中から半分に割れた月の明るさが星々の光を上回っている。

 かたわらにはキトエが寄りそうように岩肌を背にして、目を閉じている。息は、している。違う、呪法の眠りに落ちてしまっていたとしても、息が止まることはないのだと、と心の中で思う。

 二回目のあと、服は着たものの互いに眠ってしまったのだろう。夜明けの気配はないから、眠っていたのは少しの時間のはずだ。

 指先が、冷たい。今すぐ揺り起こしたいのに。

(目が覚めなかったら?)

 怖くて、できない。

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