眠り姫と生贄と命の天秤
月の光を口に含む
リコに寄りかかるように眠るキトエの顔を見つめる。髪と同じ薄水色のまつげが、呼吸に合わせてかすかに動いている。
「キトエ」
か細い声で、呼べた。キトエは目をあけない。肩に、触れた。力の入らない指で、軽く叩く。肩を、揺らす。
「キトエ。キトエ、ねえ」
肩を強く揺すった。
「お願い。起きて」
薄水色のまつげから、橙色と黄色の小さな光がこぼれる。黄緑の瞳に橙と黄と緑が差しこんでいく。
割れた月の明かりしかないのに、どうしてこんなに虹の色が見えるのだろう。
色の欠片がにじんで輝きを増す。まばたきで、いっぱいになった涙がリコの頬を伝い落ちた。キトエが慌てたように目をひらく。何か呟きかけて、「ああ」と吐息のような声をもらした。
「目が、覚めたのか」
リコは頷いた。
昏睡の呪法に勝った。一緒に逃げられる。キトエを失わずにすむ。言葉にならなくて、あふれてくる涙のままにしゃくり上げた。抱きしめられて、背中を撫でられる。うそではないと確かめたくて、キトエの胸にすがりついた。ちゃんと、目覚めている。動いている。
「ありがとう」
「キトエ」
か細い声で、呼べた。キトエは目をあけない。肩に、触れた。力の入らない指で、軽く叩く。肩を、揺らす。
「キトエ。キトエ、ねえ」
肩を強く揺すった。
「お願い。起きて」
薄水色のまつげから、橙色と黄色の小さな光がこぼれる。黄緑の瞳に橙と黄と緑が差しこんでいく。
割れた月の明かりしかないのに、どうしてこんなに虹の色が見えるのだろう。
色の欠片がにじんで輝きを増す。まばたきで、いっぱいになった涙がリコの頬を伝い落ちた。キトエが慌てたように目をひらく。何か呟きかけて、「ああ」と吐息のような声をもらした。
「目が、覚めたのか」
リコは頷いた。
昏睡の呪法に勝った。一緒に逃げられる。キトエを失わずにすむ。言葉にならなくて、あふれてくる涙のままにしゃくり上げた。抱きしめられて、背中を撫でられる。うそではないと確かめたくて、キトエの胸にすがりついた。ちゃんと、目覚めている。動いている。
「ありがとう」