眠り姫と生贄と命の天秤
キトエは自分がつらそうに眉根を寄せていた。空を仰いで、口をあけた。
それは、月の光を口に含むように。キスが、降ってくる。
「金と銀を」
離れた唇で、言われた。頭がついていかない。
『金の月と銀の星をあなたにあげる』ということだ。月の光を口に含んで、口付けてからそう言うのだ。本当は満月の夜に行う。月が割れる夜は生贄を捧げる日だから、決して行わない。
なぜならこれは、結婚の儀式だからだ。
「リコの背負うものを俺も背負う。天に入れなくても、地の底まで一緒に行こう。ふたりで神にそむくなら、割れた月で一緒になるのがちょうどいい」
キトエは、穏やかだった。
キトエを同じ罪へ引きずりこんでしまう。けれど、もうとっくに始まってしまっていたのだ。生贄の城を一緒に逃げ出したときから、決まっていたのだ。
「いいの? 本当に?」
「いいも何も、俺はずっとリコの騎士だ。絶対に離さない」
ふと、キトエの表情に薄く不安がかぶさる。
「俺だと嫌か?」
それは、月の光を口に含むように。キスが、降ってくる。
「金と銀を」
離れた唇で、言われた。頭がついていかない。
『金の月と銀の星をあなたにあげる』ということだ。月の光を口に含んで、口付けてからそう言うのだ。本当は満月の夜に行う。月が割れる夜は生贄を捧げる日だから、決して行わない。
なぜならこれは、結婚の儀式だからだ。
「リコの背負うものを俺も背負う。天に入れなくても、地の底まで一緒に行こう。ふたりで神にそむくなら、割れた月で一緒になるのがちょうどいい」
キトエは、穏やかだった。
キトエを同じ罪へ引きずりこんでしまう。けれど、もうとっくに始まってしまっていたのだ。生贄の城を一緒に逃げ出したときから、決まっていたのだ。
「いいの? 本当に?」
「いいも何も、俺はずっとリコの騎士だ。絶対に離さない」
ふと、キトエの表情に薄く不安がかぶさる。
「俺だと嫌か?」