眠り姫と生贄と命の天秤
振り返ると、一歩斜め後ろにいたキトエは目を丸くしていた。固まっている。心なしか頬が染まっていっている。
「お嬢ちゃん、はい、お金」
男性に硬貨をざらざらと握らされて、慌てて振り向く。
「ああああの、夫はわたしの護衛で! 夫にはなったばかりで! だから今まで売る機会を逃してしまって!」
「おうおうのろけかい。若いっていいねえ」
キトエが動揺しているのを見たのにつられて、リコも訳が分からない余計なことを口走ってしまった。幸いにも男性はただののろけと思って笑ってくれている。
「まあ最近物騒だし、生贄が逃げて行方を追ってるとか、鉄砲水が起きたとか何とか。このあたりは生贄を捧げてても昔から天変地異が多かったし、国がいよいよまずくなったら隣国で商売するか……って俺のぐちになっちまったが、要は結婚はできるうちにしとくもんだ。おめでとさん」
気持ちのよい笑顔を見せられて言葉を失っていたら、キトエに肩を叩かれた。
「そろそろ」
「だんな、お嬢ちゃんを幸せにしろよ」
「言われなくても」
「お嬢ちゃん、はい、お金」
男性に硬貨をざらざらと握らされて、慌てて振り向く。
「ああああの、夫はわたしの護衛で! 夫にはなったばかりで! だから今まで売る機会を逃してしまって!」
「おうおうのろけかい。若いっていいねえ」
キトエが動揺しているのを見たのにつられて、リコも訳が分からない余計なことを口走ってしまった。幸いにも男性はただののろけと思って笑ってくれている。
「まあ最近物騒だし、生贄が逃げて行方を追ってるとか、鉄砲水が起きたとか何とか。このあたりは生贄を捧げてても昔から天変地異が多かったし、国がいよいよまずくなったら隣国で商売するか……って俺のぐちになっちまったが、要は結婚はできるうちにしとくもんだ。おめでとさん」
気持ちのよい笑顔を見せられて言葉を失っていたら、キトエに肩を叩かれた。
「そろそろ」
「だんな、お嬢ちゃんを幸せにしろよ」
「言われなくても」