眠り姫と生贄と命の天秤
命の天秤
キトエに腰を抱き寄せられて、変な声が出そうになってしまった。見上げるとキトエは何だか不服な様子で、リコは腰を抱かれた腕に引っ張られるように店の出口へ連れていかれる。
「あの、ありがとうございました」
振り返ってかろうじて言葉を投げると、男性は歯を見せて手を上げた。
店を出て、石壁の建物が連なる脇道を少し歩く。腰は抱かれたままだ。
「キ、キトエ……手」
いくら大通りより人の往来がまばらとはいえ、人前でこんなに密着しているのはよくない。
キトエは立ち止まって、不機嫌な顔のままさらに強く腰を抱いてきた。リコはあげそうになった声をかみ殺す。
「な、なな何で怒ってるの?」
(もしかしてまた胸見られてた、とか? でも別に前かがみになってないし、それともお金渡されるとき手を握られたから? それとも夫って言っちゃだめだった?)
腰にある手の感触に平静さを失いながらぐるぐる考えていたら、キトエの表情に憂いが差した。
「生贄の話が出たから。リコが傷付く必要ない」
キトエはリコがまた傷付くと思って、自分のことのように、リコを守るように怒ってくれていたのか、と分かった。
「あの、ありがとうございました」
振り返ってかろうじて言葉を投げると、男性は歯を見せて手を上げた。
店を出て、石壁の建物が連なる脇道を少し歩く。腰は抱かれたままだ。
「キ、キトエ……手」
いくら大通りより人の往来がまばらとはいえ、人前でこんなに密着しているのはよくない。
キトエは立ち止まって、不機嫌な顔のままさらに強く腰を抱いてきた。リコはあげそうになった声をかみ殺す。
「な、なな何で怒ってるの?」
(もしかしてまた胸見られてた、とか? でも別に前かがみになってないし、それともお金渡されるとき手を握られたから? それとも夫って言っちゃだめだった?)
腰にある手の感触に平静さを失いながらぐるぐる考えていたら、キトエの表情に憂いが差した。
「生贄の話が出たから。リコが傷付く必要ない」
キトエはリコがまた傷付くと思って、自分のことのように、リコを守るように怒ってくれていたのか、と分かった。