眠り姫と生贄と命の天秤
街を出れば、乾いた大地に細い木々がまばらに生える風景が広がるだけになる。人がいないのを確認して、リコは切り出した。本当はもっと早く謝りたかったのだが、街中で聞かれていたら怪しい会話すぎるので言えなかったのだ。
キトエは気まずそうに顔をそらして、何度か言いかける。
「その……あ、愛人?」
「ええと、うん。そう。ごめんね」
街に入る前に目星をつけていた、今晩夜を明かす場所へ向かっていた。土を踏む靴音だけが続いて、耳が痛い。
「正直、いきなり何を言い出すのかと……もっとほかにあったんじゃ……旅芸人って設定もあったし」
「旅芸人って言っても普通すぎて追及されると思ったの! だから前に読んだ本に似たような場面があったからとっさに」
『何という本を読んでいるんだ』とキトエのけげんな顔に書いてあったが、別にリコもそんな本ばかり読んでいたわけではない。屋敷にいたころは外に本を買いに行くことも許されなかったから、キトエに頼んで買ってきてもらうことが多かった。だからキトエも知っているはずだ。リコが魔術や魔女の本ばかり読んでいたことを。
キトエは気まずそうに顔をそらして、何度か言いかける。
「その……あ、愛人?」
「ええと、うん。そう。ごめんね」
街に入る前に目星をつけていた、今晩夜を明かす場所へ向かっていた。土を踏む靴音だけが続いて、耳が痛い。
「正直、いきなり何を言い出すのかと……もっとほかにあったんじゃ……旅芸人って設定もあったし」
「旅芸人って言っても普通すぎて追及されると思ったの! だから前に読んだ本に似たような場面があったからとっさに」
『何という本を読んでいるんだ』とキトエのけげんな顔に書いてあったが、別にリコもそんな本ばかり読んでいたわけではない。屋敷にいたころは外に本を買いに行くことも許されなかったから、キトエに頼んで買ってきてもらうことが多かった。だからキトエも知っているはずだ。リコが魔術や魔女の本ばかり読んでいたことを。